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事例集

ベッドの柵にひもで縛られ...

Eさんには自慢の妹がいます。若いころから「町内一の貴婦人」「才知にあふれ、伝説の原節子の再来」といわれ、地元で着付け教室の先生をしていた妹Fさん(62歳)です。

そのFさんが脳出血で倒れたというのを聞き、病院に駆けつけました。
「意識はおそらく戻らないと思います」と医師。鼻には栄養を入れる管、腕にも薬の点滴用の針が刺されていた。

その5日後、Eさんが病院を訪ね再び妹の姿を見たとき愕然とした。
Fさんの両手は手袋のようなものをはめられ、ベッドの柵にひもで縛られていました。鼻に入れていた管を無意識にはずしてしまうため、それを防ぐためだという。

今現在も、Fさんは脳出血を繰り返し、寝たきりのままである。

せめて一口だけでも...

Hさんは食道がんで亡くなりました。Hさんの最期の願いは大好物の赤福餅を食べることでした。
しかし担当医は最後まで延命治療に力を注ぎ、Hさんの願いは叶うことなく中心静脈栄養を血管から入れられ、絶食状態でした。

見舞客が来るたび必死の形相で何度も文字盤で「赤福をくれ!」とだけ指し、その頬をつたって涙が落ちていました。

もし「尊厳死の宣言書」が前もって提示されていれば...ホスピスに移るなど緩和治療へとうつることができ、大好物の赤福も口にすることができたでしょう。

次男に使い込まれた

68歳のAさんは最近腰痛がひどくなり、そのせいか、外出するのもおっくうになり、次男に通帳を渡して日用品の買い出しを頼みました。
しかしその後、次男は日用品を買うため以外にもお金を勝手におろして使い込んでいたことに気づきました。

【対策】

第三者である専門家(弁護士、司法書士、行政書士等)に財産管理等を委任する契約を結ぶ方法があります。

あるいは身内でも信頼できる他の子供がいればその子供と契約を結ぶ方法もあります。たとえ身内同士でも契約(なるべく公正証書にする)を結んでおいた方がよいでしょう。
さらに将来の認知症の発症に備えて任意後見契約も同時に結ぶことをお勧めします。

介護の限界

妻に先立たれた65歳のBさんは認知症を発症しました。当初は長男の嫁が献身的に介護していましたが、やがてBさんの症状が進行するにつれ疲弊し、介護を放棄してしまいました。長男も仕事を言い訳に見て見ぬふりでした。
Bさんはかつて「○△の人たちすごく感じがいいので、もしボケたら○△の施設に入りたい。」という希望を持っていたが認知症が進んでしまった今となってはその思いを伝えることもできません。

【対策】

もう手遅れですが、認知症が発症する前の元気な時に任意後見契約を結んでいれば、こんなことにはならなかったでしょう。
そうしていればもちろん希望である「○△の施設に入りたい」というのも契約に盛り込めました。

不快な臭いとは?

ある地域の民生委員さんが相談に来られました。

Cさんという独り暮らしの70歳の女性の家から不快なにおいがするという苦情があり見に行ったところ、家の中はごみというごみが散乱し、野良猫、ゴキブリ、ねずみが運動会をしていました。
でも肝心のCさん本人は全然平気のようです。介護保険でヘルパーさんに掃除、食事の用意をしてもらったり、風呂に入れてもらったりすればいいはずなのに、本人は頑として受け付けません。預金通帳や、お金も部屋のあちこちに落ちてます。

【対策】

おそらく認知症を発症していますので、このままですと悪質な訪問販売業者に騙されたりする恐れもありますし、衛生面からもCさんの健康状態への影響が心配されます。

よって法定後見の申し立てをして家庭裁判所に後見人を選任してもらいます。
その後見人が裁判所の監督の下、Cさんの身上面、財産面の保護、管理をします。ただこのケースも元気なうちに任意後見契約を結んでおく必要があったでしょう。

上品で聡明だった母が...

独り暮らしの72歳のDさんは昔から上品で聡明な女性でそれでいて、4人の子供を厳しくも立派に育て上げたたくましき母でした。しかし夫を亡くしてから次第に様子がおかしくなってきました。
買い物の帰り道に迷ったり、食事の支度も面倒といってやらなくなったり、「物が盗られた!」と騒ぎ立てることがたびたび見られるようになりました。

子どもたちはDさんとの同居は選ばず、低料金を考えて狭くて汚いとあまり地元でも評判の良くない施設に預けることに決めました。
夫ともに苦労して築いた広い自宅や相応の預金もあるDさんからしてみれば、きちんとした有料老人ホームにでも十分入れるはずなのに、認知症が進んでしまった今となっては自分の財産を自分のために好きなように使う能力も失われています。
子供たちの悪環境の施設入所の提案を断るすべもありません。

【対策】

元気なうちに任意後見契約を結んでおく必要がありました。

「もし認知症になったらこの人に面倒を見てもらいたい」という人に任意後見人になってもらい、介護の方法などの希望も契約に盛り込むことも可能だったのです。

母さんのためにやってるのに!

リウマチを患っていた65歳の女性Fさんはほどなく車いすでの生活を強いられるようになりました。
それ以降は同居している長女に預金通帳と印鑑を預け、公共料金の支払い、年金の引出し等、財産管理を任せていました。

Fさんと長女は話し合い、車いすで生活しやすいように自宅をバリアフリー仕様に改築することにしました。Fさんは改築費に充てるため、所有していた一筆の土地を売りました。
改築したおかげでFさんも、面倒をみる長女のほうも非常に動きやすく快適になりました。

しばらくたったある日、長女は妹の家に呼ばれたので行くとそこには弟2人も揃っていました。開口一番、「姉さん、母さんの財産を勝手に好き放題使っているだろう。自宅もリフォームしちゃって、年金だって勝手に使ってるらしいじゃないか!」
「すべて母さんのために母さんと話し合ってやってることなのよ!」長女がいくら事情を話してもわかってくれません。

【対策】
財産管理等委任契約を結んでおくとよかったでしょう。

その契約書を見せるのと見せないとでは兄弟たちの受ける印象もちがいます。しかも公正証書にしておくとさらに強力な印象を与えます。

公正証書にするもう一つの理由は金融機関対策です。金融機関によっては受任者が本人に頼まれて本人名義の預金を引き出そうとした場合、公正証書にした財産管理等委任契約書がないと、拒否することもあるからです。

悪質リフォーム

「自宅をリフォームしたから見においで」と69歳の一人暮らしの母親Hさんの家に久々に遊びに行った娘のJさん。

「リフォームってどこ?」「わからないの?ほらここよ。最新式よ!」と指されたのは勝手口の扉。
たしかに隙間風が吹いていた以前の扉は新しい扉に付け変わっていたけど、とりたてて特別なものとも思えずどこにでもありそうなものだった。
「あとは?」「そこだけよ。」「で、いくらしたの?」「150万よ。」「......(絶句)」

よくよく聞いてみるとそれだけではなく、訪問販売の人を家に上げては浄水器、羽毛布団、着物などあるわあるわ、次々に契約していました。貯金通帳を見ると、1000万くらいあったはずがもう100万を切っていました。

【対策】
認知症が始まっているかもしれません。症状が進んでいれば法定後見の申し立てを家庭裁判所にします。

裁判所が選任した後見人が裁判所の監督のもとHさんに代わって財産管理や身上監護をします。
法定後見人には取消権という強力な権限がありますので、もしこの先、悪質な訪問販売に騙されてもその契約を取り消すことが出来ます。

ただ後見人選任前のものは、後見人は取り消せません。売買契約時に本人が認知症であったことを証明し、契約締結能力が無いゆえの契約無効を主張するしかありません。
しかし実際認知症であったことを証明することは難しいし、相手もおいそれとは応じませんので裁判になる可能性もあり費用や時間もかかってしまい現実は難しいところです。