煩雑な相続手続きを避けるために

煩雑な相続手続きを避けるために

もし、あなたが遺言を残さずサヨナラしてしまったら…

相続の取り分をめぐって、あなたの大切な家族をトラブルに巻き込む危険にさらしてしまうのは言うまでもありません。
でもその前にも家族にとって大変な迷惑がかかることがあるんです。それは非常に煩雑な相続手続きの数々なんです。
葬儀の手続き?当然それもあるでしょう。しかし最近の葬儀会社のサービスは、とても行き届いており、お通夜、告別式の段取りはもちろん、死亡届や火葬許可書などの手続きまでもしてくれます。このように葬儀手続きは、葬儀会社が、かなりのところまでやってくれます。

じゃあ前述の「非常に煩雑な相続手続き」とは一体何なのか?その主だったものが以下の手続きです。簡単な流れを紹介します。

まず何と言っても一番最初に直面するのは葬儀代の支払いです。

あなた名義の預金口座は凍結され1円も下せません。通常、全ての香典を合わせても葬儀代にはとても足りません。このように葬儀代の支払いや当面の生活費に困ってしまうなんてことになりかねません。
頼みの生命保険も受取人から保険会社に請求しないと保険金は下りませんし、たとえ請求してもなかなかすぐには下りません(保険会社によっては葬儀費用分くらいは先にすぐ出してくれることもある)。

でも公正証書遺言があれば相続人の戸籍謄本と身分証明書を合わせて銀行に持っていくだけで、預金口座の凍結が解除され、即、預金を下ろすことが出来ます。

そして、遺言が無いために遺産分割協議が必要になります。

まず財産を割り出すために財布、貯金通帳、クレジットカード、郵便物、金庫など思いつくまま片っ端から調べなくてはいけません。
そうすると意外な財産、いや、負債が見つかることだってある。不動産があればすべての不動産の登記簿謄本、不動産の評価証明書などを集めなければならない。
さらに相続人を確定するためにあなたが生まれてから亡くなるまでの一生分の戸籍謄本や除籍謄本、家族(相続人)全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書も必要になる。
これらを一般の人が集めきるまでは非常に面倒で途方もなく時間がかかるのが普通です。もし専門家に頼めば20~30万以上かかるし、その後、裁判なんかになったら100万以上にも。
あなたが生前に遺言書費用の数万円を惜しんだために。

問題は費用だけではありません。遺産分割協議をするためには、ほかの相続人との連絡調整をしなければならないし、相続人の居所がつかめないなんてことも決して少なくなく、交通費、通信費、何より話し合うための時間が取られる。

とりあえずなんとか遺産分割協議をまとまらせ相続人全ての印鑑をもらえた。しかし、表面上はとどこおりなく終えたように見えるが、各相続人の腹の中まではわからない。
相続を境に急によそよそしくなったり、結婚式や法事など冠婚葬祭にも顔を出さなくなったり、パタッと音信不通になったり、陰で互いの悪口を言いふらしてるかもしれない。
これでは事実上の縁切り状態である。

一方、遺産分割協議がまとまらない場合は悲惨である。

不動産は名義変更が出来ないままの塩漬け状態になり、そのうち相続人の一人が亡くなるとその子供たちにも相続権が移り、ますます迷宮へ。
果ては家庭裁判所の調停、それでも決着つかねば→審判、それでも決着つかねば→裁判へ。骨肉の争い、泥沼化。

このようにすべての相続手続きを終えるために、あなたを失った悲しみを抱えたまま、ご家族が多くの役所や金融機関をかけずりまわり、親族に頭を下げどれだけ時間と神経とお金をすり減らすことになるのか。
ご家族がよほど暇ならいざ知らず、仕事を持っていたり高齢だったとしたら?
ようやく葬儀、初七日も終わり一段落ついたところに以上のような膨大な手続きが待っているのである。
ゆっくり故人の思い出を偲ぶことも悲しむ暇すら満足に与えてくれません。

* 参考文献「その死に方は迷惑です」本田桂子著 集英社新書

とにかく遺産分割協議を無くすことです。それがあるのと無いのとでは雲泥の差で、どれだけご家族の負担がちがうかは、明らかです。
そのためにはきちんとした公正証書遺言を残しておくほかはありません。